なぜ遺産分割を行うのか
「相続の流れ」というページでは、相続全体の流れを説明させていただきましたが、今回は、その流れの中の一つである「遺産分割」という手続に焦点をあてて、まず、「なぜ遺産分割を行うのか」を説明します。
「法律で相続できる割合が決まっているのだから、遺産分割の話し合いなんて不要じゃないの?」
「法律通りに分けるだけなのに、なんで遺産分割は揉めるの?」
ご相談にお越しいただいた方などから、よく上記のような質問をいただきます。
そして、このページをお読みいただければ、この答えが分かると思います。
遺産分割とは、亡くなった方が遺言を残していなかった場合に、相続財産(遺産)を相続人間で分配する手続のことをいいます。
亡くなった方が遺言を残していた場合には、基本的に、遺言の内容通りに財産を分配することになるため、特に相続人間で財産分配に関する話し合いなどを行う必要はありません。
ただ、亡くなった方が遺言を残していなかったとしても、遺産分割の手続を行わなくてよい場合もあります。
具体的に、相続人が一人の場合には遺産をどのように分けるか考える必要はありませんし、相続人が二人以上の場合でも遺産が預金しかないようなときには民法で定められた割合(相続分)で金額を割って分ければよいだけですので、特に財産分配の話し合いなどを改めて行う必要がないこともあります。
遺産分割の手続(相続人間での話し合いなど)が必要になる代表的な例は、遺産の中に土地や建物といった不動産が含まれている場合です。
この点、民法の原則的なルールでは、亡くなった方が所有していた土地・建物などの財産については、相続開始後は、各相続人が共有(共同所有)することとされています。
例えば、2人の子どもが土地を相続するとすれば、その土地は2人の子どもが共同で所有することになります。
しかし、土地や建物を共有にしておくことは色々とリスクがあります。
土地や建物が共有になっていると、土地・建物を売却したり、他人に貸したり、建物の建て替えなどを行うなど、重要なことを行おうとするときには、他の共有者の承諾が必要になります。
つまり、仲の良い者同士で共有すればそれほど問題はないかもしれませんが、仲の悪い者同士で共有し、意見に食い違いが生じてしまうと、土地・建物を十分に活用できなくなってしまうおそれがあるのです。
このような事態を防ぐために、土地や建物については、基本的に誰かが単独で所有する形にすべきといえます。
そして、上で説明をした「土地・建物などの財産は各相続人の共有となる」という民法のルールは絶対的なものではありませんので、相続人間の話し合いで相続人全員が同意すれば異なる分け方をすることができます。
このことから、遺産に不動産が含まれている場合は、通常、相続人の中で誰が土地・建物を貰うか、その他の相続人は土地・建物の代わりに何を貰うかなどを相続人全員で話し合います。
これを遺産分割協議といいます。
ただ、土地や建物を誰のものにすべきかという点は法律で決まりがあるわけではありませんし、民法で各相続人には相続分(相続できる割合)が与えられていますので、土地・建物を貰わなかった人は相続分通りの相続ができるよう代わりに別の物を貰いたいと要求するでしょう。
時には、相続人全員が土地・建物を貰うことを主張して譲らないこともあります。
このように、「相続はトラブルが絶えない」、「相続は争続(争族)」などと言われているのは、遺産の分け方について法律などによる絶対的なルールがないことが理由となっています。
最初にご紹介した質問の答えはお分かりいただけたでしょうか。
遺産分割の話し合いで揉め始めると収拾がつかなくなってしまうことがありますので、立川・多摩地域で相続問題にお悩みの方は、まずは、当事務所までご相談をいただければと思います。